道都を熱くする晩夏の風物詩は今年も、多くの「縁の下の力持ち」によって支えられている。今回は、30団体から2300人以上がボランティアとして動き回るほか、個人ボランティアも700人近くが参加。不慮の事故に備える医療スタッフから、軽快なリズムで奏でるマーチングバンドまで、ランナーのドラマを見守り、演出する「陰の主役」たちを紹介する。
昨年の大会で完走メダルを手にランナーを待つボーイスカウトたち=07年9月9日
42・195キロを走り切った選手にのみ配られる「完走の証し」のメダル。
そのメダルを首にかける役割を担うのは、ボーイスカウト北海道連盟札幌地区のメンバーだ。
疲れ切った選手たちであふれかえるゴール地点を切り盛りするのは、小学生から高校生までの約80人と指導者約40人。
選手たちにペットボトルの水を手渡したり、荷物を手早く返却するのもボーイスカウトの制服姿の子供たちだ。
荷物の返却を担当する札幌稲陵中3年の柴田大地君(15)は今年で2回目のボランティア。「選手に『ありがとう』と言われるとすごくうれしい。今年もてきぱきと荷物を渡し、完走した選手には気持ちよく帰ってほしい」と気を引き締めている。
道高等盲学校付属理療研修センターの指導員たち
過酷なフルマラソンで肉体を酷使した選手の体に優しくマッサージを施すのは、道高等盲学校付属理療研修センターの指導員や札幌近郊の指圧師20人。)全員がマッサージ師の国家資格を持つ。
ゴール地点の中島公園内の中島体育センターで、選手の脚を中心に全身の筋肉をもみほぐす。一人約15分。
頑張ったランナーたちにとって「至福の時間」だ。毎年120人前後が詰めかける。
今年で4回目の参加となる同センター指導員の井上敬さん(39)は「道外選手との会話も楽しみの一つ。体のリラックスだけでなく、会話を交わすことで精神的にもリラックスしてもらえればうれしい」と言う。選手たちの「気持ちいい」の一言を楽しみに、今年も大会を迎える。
第1回から給水ボランティアを続けている道家庭婦人バレーボール連盟のメンバー
マラソンを走り抜くのに不可欠な給水にかかわるボランティアは1500人以上。道家庭婦人バレーボール連盟は第1回から札幌市内の会員60人前後が選手たちに潤いを与えてきた。
メンバーの1人、橋詰チズ子さん(63)は、ボランティアとしての参加が今年で15回目。「さまざまなドラマに触れることができるのがボランティアを続けてきた理由。今年もどんな感動があるのかしら」と胸を弾ませる。
水は、給水ポイントの周辺にある民家や商店から無償で提供されているほか、札幌市水道局が販売している500ミリリットル入りペットボトルの水道水「さっぽろの水」も2万3千本用意。同連盟の畠山彩子副理事長は「ランナーの水を切らさないように、私たちも必死に走ります」と意気込んでいる。
昨年の大会で、選手たちを手当てする救護スタッフ
年々、参加人数が増えている北海道マラソン。今回は過去最多の約5300人が参加する予定で、医療スタッフの備えも欠かせない。
レース中に体調不良を訴える選手のため、整形外科医などの専門医が計16人。看護師113人、理学療法士が60人、検査技師2人に加え、個人ボランティアも含めると計437人が医療チームのメンバーとして活躍する。リタイア者を収容するバスも昨年より5台多い46台が運行する。
選手10人に対して医療スタッフ1人。医療チームの責任者を務める松田整形外科病院(札幌市北区)の菅原誠院長は「これほど医療スタッフを手厚く配備した大会は全国的にも珍しい。これまで大事故が発生していないことの大きな要因だろう」と自負する。
スタートとゴール地点のほか、20キロ、25キロ、30キロ、35キロ、40キロの5カ所にテントを設置し、レース中にアクシデントを起こした選手たちを素早く手当てする。
事故の中では熱中症が圧倒的に多い。毎年100人余り、全体の70%近く。理学療法士が中心となって、熱中症の患者に対するアイシングやマッサージを行っている。
また、北海道ハイテクノロジー専門学校の救急救命士学科の90人が自動体外式除細動器(AED)隊を編成し、1キロごとにAEDを持ち、選手の「万が一」に備える。
本番に向け練習に励む平岸小マーチングバンド
スタートから10キロ地点では、今年も札幌平岸小マーチングバンドが選手を迎える。3−6年生の部員39人が、人気テレビドラマの主題歌「虹」や「風になりたい」「スーザ・オン・パレード」の軽快なリズム3曲を演奏し、選手を励ます。
「全日本小学校バンドフェスティバル」に道代表として3年連続で出場している道内屈指の実力校。平日は、授業前に毎朝練習を積み、夏休み中もお盆と日曜日以外は、ほぼ毎日3−6時間練習してきたという。
「目標に向かって頑張る選手の姿から、子供たちが何かを感じ取ってほしい」と指導する佐藤千夏教諭(29)。部長の芳岡あゆみさん(小学6年)は「私たちの演奏で、選手の方々が『がんばって完走しよう』と思ってくれればうれしいです」と話している。
このほか、多くの団体が、大会・選手を支えてくれている。協力団体は次の通り。(順不同)
【給水・スポンジ】▽札幌テニポン協会▽札幌市地域スポーツリーダー協会▽札幌市豊平区創造学園▽創造学園31塾▽札幌市家庭婦人ソフトボール協会▽札幌市立平岸小PTA▽札幌市立八条中PTA▽専門学校道体育大学校▽道東海大札幌キャンパス▽吉田学園公務員専門学校▽札幌山の手高▽新琴似三番第一町内会▽新琴似一番通町内会▽札幌市立新川西中▽札幌龍谷学園高▽道婦人スポーツ連盟▽札幌市立新陵中PTAOB有志の会▽札幌民謡連盟▽道教互厚別支部
【自主警備】▽道歩くスキー協会▽道走友連合会▽札幌走ろう会▽北海道新聞販売所
【荷物返却】遠軽信金月寒支店
【収容バス】NECフィールディング北海道支社
マラソン名物の紙旗が今回から姿を消す。地球温暖化など環境問題に対する社会的な関心の高まりを受け、日本陸連が本年度から主催大会での紙旗の廃止を打ち出したのを受け、道新グループなど北海道マラソン主催者が決断した。環境への配慮も今大会の特徴だ。
紙旗は、これまでの大会で道新グループとして、4万本用意していた。北海道新聞社事業局は「いつものマラソンの沿道と違う光景を見て、多くの参加者に環境問題に関心を持ってもらいたい」と話す。
審判長車も走行中に二酸化炭素を排出しない電気自動車。三菱自動車の「iMiEV(アイミーブ)」だ。