北海道マラソン

前大会報告

2007/09/09 北海道新聞朝刊全道

<2007北海道マラソン>
激走サバイバル

男子

本命欠き大混戦か

 昨年、一昨年と2連覇した渡辺共則(旭化成)が欠場、モハメド・ウアーディ(フランス)や中崎幸伸(トヨタ自動車九州)ら実績のある選手が軸になるとみられるが、例年になく本命不在で大激戦が予想される。北の大地から新星誕生も期待される。

 持ちタイムは、ウアーディの2時間7分55秒(1999年・福岡国際)が群を抜く。38歳だが、フルマラソンは15回ほどと経験豊富。あらゆる展開に対応できる強さも持っている。

 中崎は2003年の北海道マラソン2位。昨年は左足首の故障に悩まされ、北海道マラソンも17位に終わった。だが、故障も回復し、調整もまずまず順調。復活をかけるとともに、悲願の優勝を狙っている。

 今年3月のびわ湖毎日マラソン13位の喜多健一(九電工)は、今回初めて、みっちり3カ月をかけてマラソン用のトレーニングを積んだ。納得のいく練習が自信につながり、目標も「2時間12分と優勝」と明確だ。

 昨年の北海道マラソンで5位に入った山田剛史(JR東日本)は、勝負どころまで省エネで走る作戦で、昨年以上の成績を目指す。

 展開によっては、初マラソンのジュリアス・ギタヒ(日清食品)や信田雄一(日立電線)、北海道マラソンが5回目の丸山光昭(YKK)らにもチャンスがある。

中崎幸伸(28)=トヨタ自動車九州

中崎幸伸
復活かけ大勝負

 「復活」を今大会のテーマに掲げ、28歳の九州男児は北の大地にやってきた。

 2003年の北海道マラソンで2位に入り、翌年の東京国際マラソンも4位。飛躍が期待されたが05年、左足首のけがから調子を崩した。昨年の北海道マラソンも17位と不本意な結果に終わった。

 「昨季はボロボロ。練習自体がまともにできなかった。完全燃焼できなかった」と納得のいかないシーズンだった。

 今年は足首も完治し、絶好調だった03、04年のころの感覚が戻ってきたという。8月中旬から千歳で合宿を行った。けがもなく、風邪などで体調を崩すこともなく、練習メニューを予定通りこなすことができ「調子は上向き。いい合宿ができた」と手応えを感じている。

 「年も年だし、けがを防ぎたい」と、体のケアも欠かさない。1日30分程度だったストレッチも1時間に延びた。

 3回目となる北海道マラソンの印象は「我慢のレース」という。「前半は抑えて、後半の粘りで勝負。ほかの人のスパートにうまく対応したい」という。タイムよりも勝負を重視する作戦だ。

 マラソンは7回目だが、まだ優勝はない。森下広一監督(40)=バルセロナ五輪マラソン男子銀メダル=は「勝つことで、2年間のもやもやから吹っ切れてくれれば。冬のマラソンに挑戦し、五輪出場も目指してほしい」と奮起を期待する。

 尊敬する恩師の言葉に応えるために、静かな闘志を燃やしている。


喜多健一(28)=九電工

喜多健一
北京五輪への弾みに

世界陸上大阪大会のマラソンはテレビで観戦した。「(男子の)尾方選手、(女子の)土佐選手の粘りに感動、刺激を受けた。自分も北京五輪出場という大きな夢のために、今回タイトルを取って弾みをつけたい」と力強く誓う。

 フルマラソンは3回目だが、今回初めてみっちりマラソン用の練習を積んだ。6月から主に九州で合宿し、40キロ走を8本こなした。距離に慣れるだけでなく、インターバル走で切れのある走りを磨き、筋力トレーニングで上半身と下半身のバランスを鍛えることも忘れなかった。

 「仕上がりは100パーセント。目標タイムは2時間12分台、順位は優勝」。納得のいく練習ができ、自信は表情にもはっきりと表れている。

 当日のレースについては「前半はじっと我慢して無駄な体力を使わず、30−35キロあたりで勝負したい」と作戦を練る。

 優勝候補の一人、中崎幸伸は帝京大の1年後輩。「彼も強いので、負けないようにしたい」と、先輩の意地をのぞかせた。


M・ウアーディ

M・ウアーディ(38)=フランス

年齢よりも「経験」

38歳になったが、その分経験が増えているので、年齢は関係ない。暑いのは好きではないが、練習をきちんとしているし、かつ疲れを残さないようにすれば対応できる。目標タイムは状況次第だが、目標順位はもちろん優勝。


H・コリル

H・コリル(30)=ケニア

スパートかけたい

フルマラソンは3回目。気温は24−28度くらいがちょうどいいが、暑さは問題ない。先頭集団の後ろにつき、ある地点からスパートをかけたいと思っている。2時間10−12分で走り、優勝というお土産をケニアに持って帰りたい。


J・ギタヒ

J・ギタヒ(29)=日清食品

流れに乗り入賞を

フルマラソンは初めてだが、緊張はない。7月からずっと千歳や苫小牧で合宿し、練習メニューを全部こなすことはできたので、後は走るだけ。目標タイムは2時間15分台。レースの流れになんとかついていき、入賞したい。


女子

弘山軸に優勝争い

復活かけ粘りで勝負

 ベテラン弘山晴美(資生堂)と、成長株の加納由理(セカンドウィンドAC)の初出場2人が、優勝争いの軸となりそうだ。

 弘山はマラソンで世界陸上8位入賞のほか、トラックでもアトランタ、シドニー、アテネと五輪3大会連続出場を果たし、出場者随一の実績を持つ。39歳になっても、今年の丸亀ハーフで1時間10分台を出すなどスピードがある。「楽しく気負わず走りたい」と自然体で臨むが、虎視眈々(たんたん)と優勝を狙っている。

 加納は今年初マラソンを踏んだばかりだが、世界陸上の補欠代表に選ばれるほどの能力がある。フルマラソン2度目と経験は浅いものの、北京五輪の選考レース出場を目指しているだけに「しっかり勝負したい」と意気込む。

 弘山、加納が抜け出せず、集団のまま最終盤までもつれるようなことがあると、優勝争いは混沌(こんとん)としてくる。7月の士別ハーフ2位の西沢麻美(和光アスリートクラブ)をはじめ、2004年の北海道マラソン5位の根来亜紀(北国銀行)、3月の名古屋国際女子14位でマラソンデビューした内田尚子(デオデオ)らにチャンスが出てきそうだ。

 また、昨年の北海道マラソン2位の田上麻衣(菅平高原温泉ホテル)、2度北海道マラソンを制した田中千洋(大通)ら、大会の戦い方を熟知している選手も優勝争いに絡む可能性は高い。

弘山晴美(39)=資生堂

弘山晴美
39歳、自然体で

 20年近くも第一線で走り続け、いまなお日本のトップに君臨する。走ることを磨き上げてきた名ランナーは「今は走ることが結構楽しいので、北海道で伸び伸び走れたら」と、初参戦にも気負いなく自然体で臨む。

 体調は決して万全ではない。夏場は米ボルダーで高地合宿を行い9月初めに帰国したが、米では飛行機のトラブルで別の飛行機に乗り継ぐために3時間もバスで移動するなどして、日本に戻るのが丸1日遅れた。「まだ少し疲れが…。日本まで遠かったです」。ただ「体調は85パーセント、心は90パーセント。残りは当日までに仕上げます」とさらっといえるのが、ベテランの頼もしさだ。

 2000年シドニー、04年アテネの両五輪は、マラソンでの出場がかなわなかった。悩み抜いた末、2度ともトラック種目に切り替えて出場を果たした。五輪はアトランタを含め3大会連続出場。世界陸上も05年にマラソンで8位入賞を果たすなど4度出場した。

 今年は、昨年初優勝を果たした名古屋国際女子で小差の2位。5度目の世界陸上代表入りを逃した。しかし、2月の丸亀ハーフを1時間10分台で走破。かつて千五百、三千、五千メートルの日本記録を持ち「トラックの女王」と称された、そのスピードは健在だ。

 「タイムを意識せず、リラックスして走りたい」と話す一方で、「もちろん勝ちたいと思います」。夫であり監督である勉さんと、北京五輪を含めた次の目標を見つけるために、まず札幌のゴールテープを切る。


加納由理(28)=セカンドウィンドAC

加納由理
2度目のフル結果を

 7月の札幌ハーフを終えて、米アルバカーキで走り込んできた。「自己ベスト更新を狙いたい。何ごともなければできるんじゃないかな」と好走を期す。

 米での合宿は、補欠代表だった世界陸上に備える意味もあり「いつ代表が回ってきても走れる状態になっていた」。残念ながら世界の舞台は踏めなかったが、好調を維持して北海道入りした。

 1月の大阪国際女子がマラソン初挑戦。2時間24分43秒の好タイムで一躍脚光を浴び、世界陸上の補欠に選出された。マラソン転向前は駅伝などで実力を発揮。2005年の横浜国際女子駅伝で日本のV奪還の立役者となり、昨年の全日本実業団女子駅伝は最長区間の5区(11・6キロ)を走り、資生堂の初Vに貢献した。

 年齢的には遅咲きのマラソン挑戦だったが、走るたびに成長する可能性が十分ある。大阪国際女子で長い距離への不安を払拭(ふっしょく)、2度目のフルマラソンとなる今回は「リズムを崩さないように走って、結果を出したい。自信をつけたい」。残り2枠をめぐり、本格化する北京五輪の代表選考レース。加納の言う「自信」はもちろん、そこで勝負できる確かな手応えをつかむことにほかならない。


挽地(ひきち)美香

挽地(ひきち)美香(25)=天満屋

最後まで粘り強く

昨年もこの大会に出場を予定していたが、1カ月半前に故障して走れなかった。今回はいい状態でスタートラインに立てると思う。2時間32分台を目標に、最後まで粘り強く、楽しんで走って3位以内に入れるよう頑張りたい。


根来(ねごろ)亜紀

根来(ねごろ)亜紀(25)=北国銀行

仕上がり50−60%

大会翌日が誕生日なので、いい誕生日になるように走りたい。ここ1カ月は貧血や故障で思うような練習ができていないため、仕上がりは50−60%くらい。でもここでしっかり走って、次につながるレースをしたい。


内田尚子

内田尚子(25)=デオデオ

3位以内狙いたい

初マラソンだった3月の名古屋国際女子は走り込み不足で思うように体が動かなかった。今回は先頭集団についていって、後半動けるような走りができたらいい。冬より夏場のほうが好きだし、2時間30分を切って3位以内を狙いたい。


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