5千人のランナーに、5千のドラマ。21回目を迎える北海道マラソンのドラマを陰で支えるのが、数多くの市民ボランティアだ。初めてAED(自動体外式除細動器)隊が登場するほか、水やスポンジを手渡す人、不測の事態に備える医療スタッフ。毎年協力している団体に加え、今回初めて給水やコース警備の個人ボランティアを募集したところ、700人以上が名乗り出てくれた。「地域の大会を盛り上げたい」。熱い思いを秘めて当日に臨む「裏方さん」を紹介する。
3万本が提供される「さっぽろの水」。頼もしい給水の助っ人だ
フルマラソンを走り抜くのに不可欠な給水。今回の給水ポイントには、ペットボトル入りの水道水「さっぽろの水」が新たに登場し、天候とも戦うランナーを支える。
「さっぽろの水」は、「水道水のおいしさを市民の皆さんに再認識してほしい」と、市水道局が2004年から販売。豊平川上流の定山渓浄水場(南区)で処理し、塩素を除去してボトルに詰める。昨年度は500ミリリットル入りペットボトルで29万本を販売・配布した人気の品だ。
今回は、水道局が3万本を提供。給水ポイントで選手が集中し、水入りのコップが一時的に切れた場合に使うほか、ゴール地点でも配布する。
水道局総務部営業課の前村光義さんは「選手の皆さんに絶対おいしいと思っていただける」と自信たっぷり。透明な水を通じてさわやかな札幌をPRする構えだ。
選手に大好評のマッサージを担当する北海道高等盲学校付属理療研修センターのスタッフ
42・195キロを走り終えた体は、ぎしぎしと悲鳴を上げる。そんなランナーたちに至極のひとときを与えるのが、マッサージボランティアだ。
北海道高等盲学校付属理療研修センター(札幌市中央区)の指導員らが担当し、今回で8年目。午後3時から5時まで、中島公園内の中島体育センターで無料で行う。
例年100人以上が詰めかけ、20人がかりで施術しても追いつかないほど。ランナー1人15分程度、つま先から肩まで全身を手早くもみほぐす。
同センターは外来診療を通して研究や指導員の技術向上に努めている。指導員の一人、虻川浩一さん(46)は「北海道マラソンは私たちにとって研修の絶好の機会なのです」と話す。フルマラソンを走るアスリートの体は一般の人と違うため、筋肉の緊張具合や、体のどこに疲れがたまり、痛みがどう出るかなど、触れながら学べるという。
「全国から集まった選手との会話も本当に楽しい」と虻川さん。立ち上がれないほど疲れ切った体も、最高のマッサージと優しい笑顔で、すっと楽になるに違いない。
「少しでも選手の役に立ちたい」と、打ち合わせに熱が入る
スタートとゴールの場所が異なる北海道マラソンでは、走り終えた選手にそれぞれの荷物を確実に渡すことが重要となる。今年もボーイスカウト北海道連盟札幌地区のメンバー120人が、選手へのメダル掛けや給水などとともに担当する。
札幌市西区の高校2年生宇生航さん(17)は、小学6年の時からこれまで4回、荷物整理を担当してきた。午後1時すぎから、トラックで次々と運び込まれる荷物を番号順に並べる。汗だくになりつつ、乱暴に扱って破損させたりしないよう、後輩たちの動きにも気を配る。棄権して早く受け取る人もおり、常に気は抜けない。
そんな宇生さんに元気がわく瞬間は「選手の方から『ありがとうございます』と言われた時」。その一言のために、今回も裏方の作業に徹する。
北海道マラソンを想定した実習に励む北海道ハイテクノロジー専門学校の3年生
AED隊を務めるのは、北海道ハイテクノロジー専門学校(恵庭)の救急救命士学科3年88人。
マラソン大会でAEDが注目されたのは、2月の東京マラソン。途中で倒れた選手2人の命が、AEDで救われた。このとき、救急救命士を養成する国士舘大スポーツ医科学科の学生やOBによるAED隊が活躍。それを知った同専門学校の野村利明学科長が「地元の北海道マラソンで協力したい」と大会事務局に申し出、3年生のほぼ全員が参加を決めた。
コース1キロごとに2人1組でAEDを持つ。医師ら救護スタッフと連携しながら、選手と観客の「万が一」に備える。
学生は病院や救急車同乗実習を終え、各消防署の採用試験を控えた「救急救命士の卵」たち。8月29日、本番を想定した実習が同校で行われた。心肺停止状態であることを確認、AEDを取り付け、電気ショックを行う−。学生たちは訓練用の人形に対し、確実に迅速に、処置していく。
山口祐樹さん(20)と山崎雄志さん(21)は「出番がないのが一番ですが、何かあれば速やかに行動する」と気を引き締める。当日はスタートとゴール、コース上の救護テントなどで医師や看護師、理学療法士ら約190人が待機、ランナーの安全を見守っている。
練習で日焼けした顔で、意気込む北大自転車競技部のメンバー
機動力を生かした連絡係として、自転車隊も初登場する。名付けて「メディカルバイクチーム」。北大自転車競技部と北海学園大サイクリング部を中心とした13人だ。
一部区間をのぞくコース上をそれぞれ走りながら、具合の悪そうな選手はいないか、倒れている選手はいないか、目を光らせる。何かあれば携帯電話で救護本部などと連絡を取りながら対応する。最寄りのAED隊の元へ走り、AEDを運ぶことも想定される。
メンバーの大半は大会に向けて普通救命講習を受け、いざという時に自分で使えるようにAEDの操作方法を学んだ。
普段はインカレなどの大会を目指し、札幌周辺で100キロ以上の走り込みをこなす部員たち。自転車競技連盟の協力要請で、道内のマラソン大会で自転車先導を経験したメンバーもいる。
北海道マラソンでの活動は初めてだが、吉村邦寿さん(北大4年)は「万が一の時は全力でサポートします。選手の皆さんは安心して力を発揮して」と頼もしく語る。
元気な演奏で選手を元気づける平岸小マーチングバンド
10キロ地点で元気なメロディーを奏でるのは、平岸小マーチングバンドの子供たち。3−6年の47人だ。「スーザ・オン・パレード」「レーダースマーチ」、SMAPの「ありがとう」の3曲を披露する。
全選手が通過するまで30分以上も演奏を続けなければならないだけに、副部長で6年生の今村史織さん(12)は「一生懸命表現したい」と練習に熱が入る。3年連続の全国大会出場を目指す全日本小学校バンドフェスティバルの予選準備もあり、夏休みは、日曜とお盆を除く毎日、暑い体育館で汗を流した。
一方、部長で6年生の松井優花さん(12)は「走っている人が手を振ってきたり、『頑張れよ』と励ましてくれる」と、昨年の参加を振り返る。マネジャーの佐藤達也教諭(43)も「音楽を通して、子供たちが聴衆と心の交流を図る貴重な機会」ととらえている。
そのほか数多くの団体が、大会・選手を支えてくれている。協力団体は次の通り(順不同)。
【給水、スポンジ】▽札幌テニポン協会▽札幌市地域スポーツリーダー協会▽豊平区高齢者大学「創造学園」▽札幌市家庭婦人ソフトボール協会▽札幌市立平岸小PTA▽札幌市立八条中PTA▽専門学校北海道体育大学校▽北海道東海大▽吉田学園公務員専門学校▽札幌山の手高▽新琴似三番第一町内会▽新琴似一番通町内会▽札幌市立新川西中▽北海道婦人スポーツ連盟▽札幌市立新陵中PTA▽札幌民謡連盟▽北海道家庭婦人バレーボール連盟
【自主警備】▽北海道歩くスキー協会▽北海道走友連合会▽札幌走ろう会▽市内の北海道新聞販売所
【荷物返却】遠軽信金月寒支店
【収容バス】NECフィールディング北海道支社